カメちゃん日記・続編10   
   東海道・しだれ桜の名木を訪ねて  
     
     
 
   3月17日に冬眠から目覚めたのですが、暖かな日は三日程で、また3月初旬の寒さに戻って、池の中でじっとしていました。ご主人様の無知の旅人も毎日様子を見に来てくれ、心配顔でした。しかし3月末に好天が戻ると、私のことなど忘れ、しだれ桜の名木を訪ねて、三日ほど姿を見せませんでした。
 
   関東のしだれ桜の名所ランキングの第1位は六義園、第2位は小石川後楽園、第3位が長興山紹太寺だとインターネットが教えてくれた。そこで今回は六義園、紹太寺、三島大社を経て身延山久遠寺の古木を訪ねてみた。実際の訪問順は別にして、結果として東海道に沿って下る、慌ただしい旅(?)になった。勿論、最初の出発地は日本橋でなく、六義園のしだれ桜だ!    
   六義園  
  数回訪れているが、昨年は遅すぎて満開をすぎ、その前の時は少し早すぎた。今回は前日まで開花情報をチェックしていたので、素敵なしだれ桜に出会うことがができた。  
 
     
正門近くの内庭大門から観た枝垂れ桜。    すごい!
幅約17m、高さが13mの巨木だ
 
     
庭園の池のほうから眺めた姿     戦後植えられたもので
樹齢約70年程とは意外だった
 
     
   上野・国立博物館裏庭  
   六義園を訪ねた日、上野の国立博物館の特別展「インド仏教美術の源流」、「みちのくの仏像」を観に立ち寄った。実はこちらが主目的だったのだ。上野公園の桜はソメイヨシノが主で、満開にはまだすこし早かった。幸い、来館者に開放されいた博物館裏庭のしだれ桜が満開だった。  
 
     
池の縁で 暖かな日差しを楽しむ来館者   博物館裏庭のしだれ桜
 
     
   藤沢宿 遊行寺  
   東海道を下る時、地元の藤沢宿は無視できないが、桜の名木など聞いたことがない。自宅近くにある遊行寺の放生池の脇に、すこし遅咲きだが綺麗なしだれ桜があるのを思い出し、最後に訪れた。  
 
   
しだれ桜はまだ1~2分咲きだった   桜の下で楽しむ近くの子連れママたち
大銀杏の下のソメイヨシノは8分咲き 
 
 
     
   小田原宿・長興山紹太寺のしだれ桜  
   箱根登山鉄道の入生田駅を降りると、歩いて5分ほどで紹太寺につく。農家のような本殿で小さな境内に桜など見あたらない。これが春日局と小田原城主稲葉正勝の眠る寺?一瞬目を疑う。右側にすぐに行き止まりになるような広い道があり、そこで車を降りた人達も紹太寺を無視して右奥の小高い山に向かっているその先に小山に登る階段が見えた  
   
     
紹太寺山門     紹太寺本殿
 
   藁葺き屋根の小さな本堂の理由は、かって大伽藍を誇った紹太寺が、江戸末期の火災で焼失し、小院の清雲院が紹太寺の寺号を継いでいるためだそうだ。往時の紹太寺は七堂伽藍の整った大寺院で、360段の石段を登ったあたりに伽藍跡があった。今は生活感のあるミカン畑になっている。その200mほど先にお目当てのしだれ桜がある。石段の苦手な方には階段の右手からしだれ桜の下まで舗装された曲がりくねった登り坂がある。我々熟年カメラマン(?)は長い登り階段と石畳の道に挑戦し、頑張った。戻りは曲がりくねった道で被写体を探した  
 
     
旧伽藍跡に向かう360段の長い上り階段    放生の池に架かる透天橋で一休み
ここからは残り50段で 旧伽藍跡に辿り着く
 
樹齢340年を超えるしだれ桜の古木
下の方に休憩所がある 
  休憩所の更に下から眺めると
しだれ桜のそろい踏み 
 
   このしだれ桜は樹齢340年を超え、高さ13m幹の太さは約4.7mで枝張りは南北にそれぞれ約10m東西にそれぞれ10m、7mで樹形が良く、羽を広げて仮眠をとる白鷺や丹頂に似ていると形容される。小田原市の指定天然記念物に指定されている。
帰りに、小田原の街を抜け、お花見で賑う小田原城に向かった
 
   小田原・西海小路(さいかちこうじ)の桜並木  
 
     
壁に映る桜の影  昔は武家屋敷の町 窓ガラスに映る桜 
 
     
   三島宿 三嶋大社  
   箱根を超えた昔の旅人のように、三島の宿場で一休み。、昔日の三島女郎衆は今は無く、三嶋大社の美しい桜たちが出迎えてくれた。三嶋大社といえば、国の天然記念物のキンモクセイが有名で、樹齢1200年と云われる。三嶋神社のご神木でもある。桜の巨木も存在するが、なんと言っても多彩な桜の群生だ、約15種200本の桜が本殿へと続く参道と神池沿いで楽しめる。  
   
     
三嶋神社本殿    神門  キンモクセイの老木は
門を入った右側にある
     
国の天然記念物
樹齢1200年のキンモクセイ
  
  桜の古木もある 
     
 
桜祭りで大門から神池までの参道に
屋台が並ぶ 
 
  神池から神門への参道でも
桜並木が楽しめる
 
 
     
神池は7色のしだれ桜
で囲まれている 
  シダレ桜などが折り重なり、
色彩の妙を示す。一番手前左は大島桜
     
     
 神池のシダレ桜   神池のシダレ桜 
 
     
   終着地は久遠寺のしだれ桜  
   最後は樹齢400年といわれる2本の巨大な古木だ。往時の身延巡礼は東海道・興津宿から身延道を北に向かったのだが、現在は手前の由比宿の北で、新東名高速が国道52号線(通称富士川街道、昔の身延道)に交わる。そこから裏富士の姿を見ながら車で1時間ほどで身延山入り口に到着した  
 
     久遠寺境内図 
日蓮宗総本山・久遠寺の本堂 
本堂の右手に2本の桜の古木がある
 
   
 外から撮った本堂内陣 ここの天井に龍図
残念ながら堂内は撮影禁止だった
  菩提悌と呼ばれる急勾配の石段
喘ぎながら登る参拝者
 
     
   久遠寺には樹齢400年を超えるしだれ桜が2本あり「全国しだれ桜10選」に選ばれている。桜が今回の主役だが。山門を入ると前に壁のように聳える長く急勾配の石段も注目に値する。高さ104メートル、段数287段の急傾斜の石段で、南無妙法蓮華経の7区間に分かれ、区間毎に踊り場があるそうだ。石段を嫌う人には別に本堂下までの坂道があり、我々もその道をバスで登った。境内に入ってから怖いもの見たさに石段を上から見下ろすと目が眩むようだった  
     
 
     
祖師堂脇のしだれ桜の古木    甘露門側のしだれ桜の古木 
     
本堂欄干から法喜堂を望む    本堂前から眺めるしだれ桜
 
 
   
 古木から垂れ下がる長い枝  地面まで届く長い桜の枝 2本の桜の古木の間にも
綺麗なしだれ桜
 
 
   実は久遠寺参詣は紹太寺を訪ねた前日の3月30日だったが、東海道の道順で日時を前後して報告している。遊行寺はさらに2日後で、連日の暖かな陽気で、ソメイヨシノも8分咲きになっていた。  
     
   日本の桜の8割がソメイヨシノだそうで、無知の旅人も幼い時から「桜=ソメイヨシノ」の感覚で、それも一本の名木を愛でるのではなく、集団としての存在感を楽しむことが多かった。しだれ桜は近くに古木・名木がなかったので、縁遠かった。時間に余裕が持てるようになり、高遠の子彼岸桜や京都の紅しだれ桜の濃い色合いに感銘を受け、歴史的建造物に樹齢100年を超える老木や名木があることも知った。そして、それらの多くは「しだれ桜」であった。  
     
     
     
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