陽蝕園・・武市が辿り着いた夢の庭
 
 
  実は私のご主人様無知の旅人は出かけるまで、陽蝕園に関して、何も知らなかったようだ。相変わらず無知なのだ!
 ただ滝上町の名前は芝桜の名所として覚えていた。北海道北東部に芝桜の名所が二つある、「東藻琴芝桜公園」と「滝の上芝桜公園」だ、前者を訪ねたことがある無知の旅人は、芝桜が不毛の土地でも、きれいな花を咲かせると聞き、なぜか芝桜公園=不毛の土地と思い込んでいる。そんな土地に素敵な花園を作った魔法使いがいるという。カメちゃんも是非会いたいと思っている。
 
     
 
 芝桜で有名な滝上町のホームページ
陽蝕園は約半世紀をかけ、園主・高橋武市氏がたった一人で大地に絵を描くように、木や花を植え、池を掘り、道をつくった。約8万平方メートルの敷地には約800種類の季節の花々が春・夏・秋それぞれに咲き誇り、訪れる人を楽しませてくれる。園内の通路延約5kmと記されている。
 
 
   さらに、園内施設には駐車場、簡易トイレと続く、これが特記する施設?かなり風変わりな観光農園らしい。辿り着いてみると、入り口の前に広場があった。駐車場だ。その下の雑木林の中に工事現場にある簡易トイレが一個置いてあった。勿論飲み物の自動販売機などない。従業員もボランティアもいない。接客も花園の管理メンテナンスなど、全て武市さん一人でやる。ここは武市さんの生活の場であり、花と対話する夢の庭らしい。  
 
   
 陽蝕園入り口 2〜3人のグループでゆっくりみてくださいと勧めている 
 
 
   
 朝8時に武市さんが入り口にお出迎え    入り口をはいりしばらく歩くと
武市さん手作りの受付小屋がある
 
     
  花クラブのカルチャーツアーなので、開園前の2時間程を利用した、武市さんによるガイドツアーが準備されていた。これを楽しみに来ている方が多い。(一般客は毎週日曜日の朝、同様のガイドツアーがある)  
   武市さんは、苦難の60年を楽しそうに回想し、花と過ごしてきた過去を誇りを持って語る。そして現在、花と共に生きている幸せを、身体全体から発散する。聞いているこちらまで幸せな気持ちになるから不思議だ。  
 
   
 園内通路を散策する無知の旅人    散策路はきれいに整備されている
園内全ての道の草刈りに15日かかる
 
   
 散策路の両脇は何処も花で一杯    
   
トドマツ、カラマツの道
別にトドマツの林、カラマツの林もある
 
  エゾ桔梗?
   
シャクナゲの森を散策する観光客     シャクナゲ
     
 薔薇    桔梗とと矢車草
 
   もともと農作物の育ちにくい極寒の約8万u(約2万4千坪)の農地を花の農園に作り変えた。それも一人で成し遂げた。成功と挫折を繰り返し、60年が経過した。若いとき植えたカラマツやエゾマツも立派な林にそだった。夢の庭を作ル為、小山を幾つか築き、花を植え、、雪解け水をためる池も5ヶ所できた。それらをつなぐ散策路にも工夫した。それらをすべて一人で作り、管理している。
武市さんの話で一番印象に残ったのは「散策する人が自然に出来た山道だと錯覚したら『俺の勝ちだ!!』と叫びたい」だった。彼は人工の自然作りに挑戦しているのかもしれない。
 
 
     
  もともと農地だった所に地形的な変化をつけようと、
一輪車で何年もかけ小山をつくった
    真っ赤な紅葉も武市さんの努力で
厳しい環境に馴染み花と共生している
 
 トンボ池 黄色の花は水性植物のコウホネ    トンボ池の蓮  
     
     
     菖蒲池
 
   人工の山や池を巡る道は互いに見えない工夫がしてある  
 
     
 小さな花がたくさん付いている   散策路脇の紫陽花
   
     
 
     
     陽蝕園の花たち
ここでは、約800種類の花が4月下旬より9月の終わりまで次々と咲き続く。我々が訪れた7月初旬は咲いている花の種類が一番多いと説明された。過酷な大地を花に優しい土地に変え、花たちも厳しい気候に耐えるように体質を変えてきた。北海道の固有種はもちろんのこと各地から集められた花の自生が試され、品種改良に努めた。そしていま、多くの花が昔からここにいたような顔をして咲き乱れている。
自然の姿を追求しているので、花の名札などない。武市さんはそれぞれの花が、この土地に馴染む課程を説明してくれたが、覚えきれない。その上、花自体も厳しい自然に生き抜くため、少し変わるので図鑑を見ても分からないのが多い。
 
 
   
 フロックス?    
     
 黄色のルビナス    武市さんの創った深紅のルビナス
     
     
     
     萩
     
     
   
     
      
 桜薔薇    
     
     
     杉に巻きついた
蔓紫陽花
     
     
 
   
    武市さんの祖父は、岩手県からこの地にやってきて山仕事に従事しながら農地を開拓した。春から夏場は農作業をやり、冬場は山仕事をする半農半林であった。その土地であるが、冬には氷点下30度近くになり、季節凍土になる土地は表土が薄く、その下はこちこちで、栄養分が少なく、初めは雑草も生えず、苔しか生えていないような土地であったらしい。武市さんの祖父と父の二代で奮闘し土地を改良し、何とか農作物を作り、それを行商し生活が出来るようになった。まさに北海道開拓の縮図である。
気になるのは、彼は現在73歳独身である。彼の知識と技術は誰に受け継がれるのであろう。この農園の後継者はいるのだろうか?彼の死後、このまま朽ち果てたら残念だ!
 
     
    平面幾何模様のフランス式庭園に対応する英国式庭園は、広大な敷地があって成り立つ風景式庭園である。日本のガーデニングで使われる「イングリッシュガーデン」はイギリスの農家の庭をイメージした「コテッジガーデン」なのだ。英国風の庭に咲く花園の中で感じる幸せ感を体験するなら、旭川地域の上野ファームに代表される観光ガーデンがベストだ、また本式の風景式庭園なら十勝地方に、イギリスのガーデンデザイナーズ協会で大賞と国際賞を獲得した「十勝千年の森」などがある。それらも順次報告するが陽蝕園には全く違う感動があった。  
     
   陽蝕園が紹介されている本  
 
   
 小学館発行
文 さとうち藍 写真 関戸勇
1525円+税
 
 
     
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